開催に向けてのご挨拶
~古都から拡げるPETの大きな和~
2017年のサマーセミナーが奈良で行なわれることになり、そのお世話ができることを大変光栄に思います。振り返ると近畿での開催は2007年に武田病院の林田孝平先生が琵琶湖ホテルでされて以来、ちょうど10年ぶりということになります。この間にPETの臨床応用はますます盛んになり、現在、国内の350を超える施設で検査が行なわれています。急成長の主な原因が、自施設には加速器を持たず商業供給されたFDGを使用する、いわゆるデリバリー施設の増加にあることは皆様よくご存じの通りです。これを反映して、サマーセミナーの性格も研究者を中心とした仲間うちの小規模な集まりから、いろいろな業種・職種の参加者が活発に意見交換する、年に一度のイベントへと発展して来ました。
そこで、今回大会のテーマは「古都から拡げるPETの大きな和」としました。「輪」としなかったのは「国のまほろば」大和(やまと)に掛けただけではありません。上に述べたごとく、これまでのサマーセミナーの成果でPETの開発・研究や診療に携わる人達同士の交流はある程度進んだように思います。これをさらに発展させ、「残念な依頼」ばかり出してくる他科の臨床医、PET製剤を特殊造影剤と勘違いしている非核医学系画像診断医、絶食指示を守ってくれない被検者、開発の苦労も知らずに実用化を急がせるユーザー、などなど、つい「あいつら」と呼びたくなるような人々の立場までも理解しつつ、仲良く検査を進めて行く方策を探りたいという期待を込めています。
さて、デリバリー施設に居る私が大会長ですが、サイクロトロン施設に所属する方々も多数実行委員、プログラム委員に入って頂きました。その方々のお力添えで、まだ前臨床段階の、あるいはもうすぐ保険診療が開始されそうなPET製剤関連のセッションも、大いに盛り上げて行きたいと思っております。特に、今後予想される認知症患者数の加速度的増加を鑑み、アミロイドPETの話題が注目です。また、例年通りWork in progressの時間帯を設け、PET機器の最新技術に触れる機会を提供します。
もちろん、この会の伝統である、本音で語り合う学会らしくない集い、という性格は大切に引き継ぐつもりです。奈良は日本酒発祥の地ともいわれており(奈良市郊外の菩提山正暦寺に碑が立っているそうです)、酌み交わしながら夜まで議論するには格好の場所です。日中は各会場で形式ばらない真摯な意見交換を行ない、日が暮れてからは夜の学校・懇親会・情報交換会で仲間たちとさらに語らいつつ大いに親交を深めましょう。
奈良市で開催されることから、若草山などの優しい景色や文化財との触れ合いを楽しみにされている参加者も多いことと思います。ちなみに、奈良県は人口10万人あたりの国宝・重要文化財数では全国トップです。会場の日航ホテルは奈良公園にほど近く、セッションの合間に疲れた頭を休めるための散策には絶好の立地です。セミナー会場で最先端科学の成果を知ることと、外で南都古寺を鑑賞したり万葉のロマンに浸ったりすることとのギャップもまた、風情があってよろしい。ただ、公園の鹿は人馴れしており、餌を貰おうとアグレッシブに寄ってきますのでご注意を。また、懇親会でも1300年の古都、奈良らしい趣向で皆様をおもてなしすることを考えております。何が出てくるかは、当日のお楽しみに取って置きましょう。
それでは来年の晩夏、ならのみやこでお会いしましょう。リニア新幹線はまだ通っておりませんが、現在の電車網でも大阪・京都の都心から1時間かかりません。案外近いですよ。多数の方々の参加を心からお待ちしています。
PETサマーセミナー2017 in 奈良
大会長 御前 隆
天理よろづ相談所病院 RIセンター